『ファクトフルネス』とは、データに基づき、感情や偏見に惑わされず、事実を認識することです(本書ではそのような意味で使われています)。
世界は先入観や偏見に満ちています。
現代社会では、データを誰でも簡単に入手できるようになりました。
本書は、根拠のあるデータを示し、客観的に判断する習慣を身に着けるのに最適な本です。
著者はどんな人?
著者はハンス・ロスリング。ハンスはスウェーデン出身の医師で、20年に渡りアフリカにて、麻痺をもたらす疾患の原因究明に力を注いだ。その功績により、ウプサラ大学から博士号を授与されている。本書を執筆中に、68歳で死去。死後、息子夫婦であるオーラとアンナが出版した。
この本が伝えたいこと
「世界は先進国と途上国に分断されている」
「犯罪件数は年々増加し、治安が悪くなっている」
このような先入観に囚われている人は多いです。
しかし、数字を中心とした客観的なデータを示すことで、それらは誤りであることが分かります。
(実際には先進国と途上国の差はどんどん縮小しており、日本の犯罪件数は減少傾向にある)
本書は、「いかに先入観を取り払って正しい判断ができるか」の手法を伝えてくれています。
こんな人に読んでもらいたい
ずばり「データに基づいた意思決定を重視するビジネスマン」に読んでもらいたいです!
「この業界はこのように分かれているはずだ!」
「この消費行動はこのように成長していくはずだ!」
と、先入観から思考停止する人は多いですよね。
しかし、世界の情勢はどんどん変わっています。
データ分析を正しく行い、事実を正確に把握するスキルを身に着けていきましょう!
内容を簡単にご紹介
著者は、以下の10の「本能が引き起こす思い込み/誤った行動」を避ける手法を紹介しています。
- 分断本能 「世界は分断されている」という思い込み
- ネガティブ本能 「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み
- 直線本能 「世界の人口はひたすら増える続ける」という思い込み
- 恐怖本能 危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
- 過大視本能 「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
- パターン化本能 「ひとつの例にすべてが当てはまる」という思い込み
- 宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
- 単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
- 犯人捜し本能 「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
- 焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
これらは全て、人間の本能に基づく思考パターンであり、長年の進化の過程で獲得したものです。
(「これは進化の過程で必要に迫られ獲得したものだ」と頻繁に言及している)
何も注意しなければ、間違った思考に陥ってしまうということですね。
本書を読むことで、正しい事実認識の重要さを知ることができます。
読んでみての感想
私も経営者であるため、常にデータに基づいた経営判断をする必要に迫られます。
人間で不思議なもので、無意識のうちに
「過去にこうだったから、この注文は伸びるだろう」
「この競合企業はこれ以上攻めてこないだろう」
など勝手な思い込みで判断しそうになるんですよね。
これは大変な誤りで、個人の思い込みではなく、データに基づいた判断をしなければなりません。
もちろん、経験や勘も重要ですが、最終判断は客観的な根拠が無いと、誰も納得しないですよね。
本書が全ての分析者のための「戒め」になれば、嬉しく思います。