親の会社を継ぐ技術

本書は創業家出身の事業承継者向けのものであり、「アトツギ」と呼ばれるの方々に向けての書籍紹介となります。

創業家出身で経営者になった私もそうですが、アトツギは様々な苦労を伴います。

円滑に事業承継を進めるには、何が必要なのか?何が障害であり、それに対する解決策はあるのだろうか?著者も創業家出身の二代目であることから、実体験を元に書かれた中々リアリティのある内容となっています。

親の会社を継ぐ技術

著者はどんな人?

著者は田村 薫。サンクリエイト株式会社 代表取締役、株式会社アウェイク 代表取締役、株式会社GIVERZ 取締役。大学卒業後、父親の経営する保険代理店に就職しのち代表取締役となる。後継者の才能を開花させることを目的とした、後継者コミュニティ「後継者倶楽部」を主宰。

この本が伝えたいこと

実家の家業を継ぐにあたり、助言してくれる人や専門書が少なくて困っているアトツギは多いと思います。

それは当然で、会社を継ぐのって、知識とかテクニックももちろんそうですが、「感情」という要素の占める割合が大きいんですよね。先代が親や親族であれば特にそうなります。そしてそれらは実体験から来るもの、つまり自分自身が後継者になったことがある人でないと、アドバイスそのものが難しいのです。

どうして良いかわからないアトツギのために、自身もアトツギである著者が、自分の経験を少しでも参考にしてほしい。これが著者の伝えたいことだと思います。

 
ジンベイ
アトツギの苦悩は理屈だけでなく感情の占める割合も大きいです

こんな人に読んでもらいたい

本書は、自身がアトツギであるか、或いはアトツギにバトンタッチする側の方に役立つ内容となっています。

従って、アトツギやアトツギに渡す側の双方に読んでもらいたい本です。

また、創業家の方でなくとも、ファミリーのすぐ近くで働いている従業員だったり、出入りしている税理士であったりするならば、アトツギの思考回路を理解することができます。

内容を簡単にご紹介

事業承継者が家業に入った後、大抵何かしらの壁にぶつかって悩みますよね。その壁を五通りに分類し、「五つの龍」と表現しています。

  • 時の龍
  • 疎外の龍
  • 監視の龍
  • 執着の龍
  • 不動の龍

先代が手掛けていたビジネスが賞味期限切れを起こす「時の龍」、相談相手が社内に存在しない「疎外の龍」、周囲から一挙手一投足を監視されてしまう「監視の龍」、先代が地位に執着してどいてくれない「執着の龍」、そして後継者自身が変わろうとしない「不動の龍」の5つです。

アトツギである以上、最初の4つは避けられないでしょう。そしてそれを嘆くだけで変わろうとしない姿勢を「不動の龍」として定義しています。

嘆くだけでなくアトツギ自身が変わり成長することで、五つの龍を克服するべきであると、著者は説いています。

また、「コントロールできないことは忘れること」とも書かれています。

「会社の改革をしようとすると必ず邪魔が入る」「先代が話を聞いてくれない」「社員が自分ではなく先代の意見ばかり聞く」などは、アトツギであれば誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。

しかし時間は圧倒的にアトツギの味方。時間を掛けて粛々と真面目に仕事に取り組んでいけば、自然と諸問題は解決していくでしょう。

 
ジンベイ
「鳴くまで待とうホトトギス」を実行した徳川家康は天下を取りました

読んでみての感想

世の中のアトツギたち、或いはこれからアトツギに渡す側の方、会社にアトツギがいてどう接すれば良いかわからない方などに大いに参考になる一冊です。

私は事業承継が済んでから本書に出会い、「もっと早く読んでたらなあ」と思いました。それくらい、アトツギ(とその周辺の方々)にお勧めの本です!