本書は日本を代表する名経営者、京セラ創業者の稲盛和夫さんの書かれた本です。
稲盛さんは、経営を体系的に学校で学んだわけではなく、社長になってからの経験則から、独自の経営哲学を編み出しました。
そんな稲盛さんの書かれた本書は、本人の体験から絞り出すような経営論が沢山散りばめられています。
大学で経営学を学んだ一般論ではなく、全て自分の体験だから説得力がある。読みごたえ十分の、お勧めの一冊です。
著者はどんな人?
著者は稲盛 和夫。京セラ創業者、日本航空会長。中国など海外にも多くのファンを抱える経営者。20代で京セラを創業、破綻した日本航空の会長に無報酬で就任。著書に「稲盛和夫の実学」「稲盛和夫の哲学」「生き方」「アメーバ経営」など多数。鹿児島県出身。
この本が伝えたいこと
「会計とは経営そのものである」これが著者の一番伝えたいことですね。何もないところから京セラを育て上げた稲盛さんは、会計を経営に結び付け、納得いくまで理解することを重視したようです。
自分が予想したものと実際の決算の数字とが食い違う場合、すぐに経理の担当者から詳しく説明をしてもらうようにした。私が知りたかったのは、会計や税務の教科書的な説明ではなく、会計の本質とそこに働く原理なのだが、経理の担当者からは、そのような答えを往々にして得ることができなかった。だから私は「会計的にはこのようになる」と言われても、「それはなぜか?」と納得できるまで質問を重ねていた。
このエピソードは、稲盛さんの経営哲学を良く表しています。稲盛さんは経営者として、「なぜそうなるの?」「それで、その数字は経営にはどう関係するの?」と納得することを重視していたようです。
つまり「経営者は会計を人任せにせず、その意味を必ず自分で理解、納得すること」と本書では何度も伝えています。
こんな人に読んでもらいたい
数字を一番気にする経営者はもちろん、経理担当者、マーケッター、営業マン、工場管理者など、数字を司るポジション全ての方に読んでもらいたいです。
文中には稲盛さんの名言中の名言「値決めは経営」が登場しますが、数字をただの数字として見るのではなく、その及ぼす影響の大きさについても学ぶことができます。
内容を簡単にご紹介
- 公明正大に経営
- キャッシュベースで経営する
- 筋肉質な財務体質にする
全般的に、著者の「会計を切り口とした経営哲学」を説明したものになっています。
著者の人生哲学は、公平、公正、正義、努力、勇気、博愛、謙虚、誠実などをベースとしたものです。
会社経営もその通りに、公明正大を旨に、正しいと思ったことは言うべきであると説いています。
その中でも、「企業はキャッシュベースで経営するべきである(P/Lベースではない)」とも説いています。P/Lを見ることで経常利益ばかり気にする経営者は多いですが、結局キャッシュを手元に残さないと、中で働いている人にお金が行きわたらないですよね。著者は常にキャッシュフローと睨めっこしながら経営をしてきたようです。
図解:財務三表ではキャッシュフロー計算が重要
筋肉質な財務体質とは、在庫を不用意に持ってキャッシュをそこに眠らせたり、不必要に高価な設備を購入せず、最低限ものが作れる安価な設備で十分、といった、「不必要なお金の使い方をしない」ことを地道に実践することを説くものです。
蓋を開けてみると、ごく当たり前のことが書かれているのですが、それを実践できる経営者は少ないです。著者である稲盛さんがいかに基本に忠実で、優れた経営者であるかを示すものです。
読んでみての感想
著者である稲盛さんがいかに会計に対してこだわりのある方なのかよくわかる一冊でした。
名経営者は会計をおろそかにしない。
それは、経営者だけでなく、古今東西歴史上の偉人なども同じだと思います。
徳川家康が徹底した倹約家で、家臣が苦笑するくらい支出を抑えていたエピソードを思い出しました(言うまでもなく彼はそれで天下を取りました)。